北海道札幌市を中心に、セラピスト向けの経営サポートやコンサルテーションをしている、MUKUTURUの上吹越(かみひごし)崇仁さんを紹介します。
私はエベレスト登山者を助ける人々「シェルパ」になぞらえて、セラピストをサポートする存在を「シェルパ」と呼んでいるのですが、上吹越さんも「シェルパ」の一人と言えます。
「数字」という切り口からセラピストをサポートするシェルパ
経理処理や価格設定など、「数字」に苦手意識を持っているセラピストは少なくありません。
特に個人事業主として活動するセラピストにとっては、常につきまとう課題であり、年度末が近づく度に憂鬱になる人も多いことでしょう。
上吹越さんは、そんな「数字」という切り口から、セラピストをサポートするシェルパです。月ごとの決算や傾向分析、確定申告の補助などをしています。
また、上吹越さんは、メニューの価格設定や経営戦略についてもアドバイスをしています。
セラピストが活動するにあたって、自分の提供するサービスに値段を付けなければなりませんが、この価格設定に悩むセラピストはたくさんいます。
セラピストとして特徴あるオリジナルメソッドやトリートメント、セッションのような価格相場観があってないようなセラピーについては、つねに手探りで価格設定をすることになります。
上吹越さんに価格設定に対してどのようなアドバイスをしているのかを聞いたところ、彼から具体的な数字を提示することはないのだそうです。
「セラピストさんと話をする中で“このくらいの価格で”と、セラピストさんから数字が出てくるように聞き出すことを心掛けています」(上吹越さん談)
例えば、新しいサービスに価格を付ける場合、既存のサービスの価格設定から掘り下げることもあります。「なぜ、その値段を付けたのか」を掘り下げていくと、その人が何を基準にして考えているかが見えてくることもあるそうです。
上吹越さんは、事業の中で価格やサービス内容を考えるより、自分がどのようなセラピストライフを歩みたいか?さらに人生において何を大切にして過ごしたいか?という観点が、提供するメニューに影響し価格設定の基準にもなるはずと語ります。
「話を聞いていると、求めている自らのセラピストライフと、サービスの提供の仕方や価格が乖離していることがあります。その乖離があるとき生活と仕事の歯車がうまく回らず、続けるうちに苦しくなってしまうのではないかと思います。価格設定を入り口にしていますが、話をしているうちにセラピストご自身で気づくことがあるようで、ご本人からアイディアや具体的な数字が出てきます」(上吹越さん談)
なぜ、このようなスタイルでセラピストをサポートするようになったのか? 上吹越さんに聞いたところ、「人と対話することで、相手も自分もうまく事が回っていくような仕事をしてみたいと思っていたんです」と笑顔で答えてくれました。
人との対話をなによりも大切に
彼は大学で経営学を選択し、プログラミング会社から社会人生活をスタートさせ、その後も一部上場企業を含むいくつかの企業で、15年間、経理や人事に携わってきたそうです。
その中で、将来的には個人で活動することも考えていた上吹越さんは、当時勤めていた事業所が撤退することを機に、独立を考えたといいます。
しかし、いざ具体的に独立について考えた時に、「自分の軸」が定まっていないことに気がつきます。
「自分の軸」とは自分の活動の根幹のようなもので、ないがしろにできない大切なものだったり、活動の意欲を与えてくれるものです。
「僕がどうして個人でやりたいのかを突き詰めたときに、“家族との時間を大事にしたい”という思いに行き着いたんです。家族と過ごす時間を一番大切にしながら、事業も動かしていく。そうやって豊かな時間が過ごせれば、最高だなって思ったんです」(上吹越さん談)
上吹越さんは、人の話を聞くのも、自分で話をするのも好きなのだそうで、サラリーマン生活でも、独立をしてからも、人との対話をなによりも大切にしています。
時には知り合いの紹介で他業種のセミナーにも参加するそうで、私が“セラピストの学校”で行っているオープンキャンパスにご参加いただいたことが、セラピスト業界とのご縁になりました。
そこから、セラピストが数字のことに疲弊せずに事業を発展させるサポートをすることになり、さらに「セラピスト自身が持っている価値」に気づいてほしいと考えるようになったそうです。
「これからも1人ひとりのセラピストの生き方にフォーカスして、それぞれのセラピストライフを豊かにしてもらうためのサポートをしていきたい」彼は笑顔でそう語ってくれました。
校長からのメッセージ
「あなたの事業に自由な時間と、感動の経理を」をコンセプトに掲げる上吹越さん。青色申告のための経理サポートは、22,000円/月。コンサルティングは、3ヶ月45,000円、半年88,000円、年間132,000円と、費用も明確です。月次決算、傾向分析、メニュー構成や戦略的なことを話す中から、新しいメニューが生まれることもあるようです。
なお、集客方法としては特に広告は出していないそうです。
新規のお客様は既存客から紹介が多く、FacebookなどのSNSを通して口コミでつながるお客様もいるとのことでした。
さて、セラピストを含めた個人事業主や経営者の方と対話をする中で、上吹越さんはこんな風によく思うそうです。
「経理的なことが苦手で、全力で事業に打ち込めなかったり、アイディアはあるのに事業化に踏み出せなかったりして、本当にやりたいことをできていない方がいます。でも、それはすごくもったいないと思うのです。私がシェルパとして関わることでそれらができるようになるのであればそんなに嬉しいことはないですから。」(上吹越さん談)
彼から話を聞いていて。セラピストのセラピーやセッションの中でお客様が気づきを得ていくというプロセスもまた、上吹越さんのセラピストとの関わり方とより近いのでは?と感じました。
まったく別の背景を持つ人の言葉が、前に進むためのきっかけになることは往々にしてあります。お客様に対するセラピストがそうであるように、セラピストに対するシェルパもそういう存在なのです。
「お客様と同じ方向を向いて、双方が発展していく。互いに豊かになっていく、というのが理想です」そう楽しげに語る上吹越さん。
彼のようなシェルパが、セラピストが力を発揮するのを助ける。さらにセラピストが、お客様の心身の健康を助ける。そうした関係性がつながって生まれる社会は、きっと明るくて楽しいのだろう。
そんなことを考えさせられるインタビューでした。
MUKUTURU