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岡田和恵さんのセラピストライフ~個人サロンセラピスト

2022/09/01
岡田和恵さんのセラピストライフ~個人サロンセラピスト

 大阪市阿倍野区にて13年にわたって個人サロン「アロマセラピー フィール ときどき精油と古本」を営んでいる岡田和恵さんのセラピストライフを紹介します。


 岡田さんのサロンでは、お客様の体の緊張を取り、体調を整えるために、ゆったりとしたリズムのアロマトリートメントを提供しています。


 体の緊張が解れると、心もリラックスしていくからか、施術中に眠ってしまうお客様も少なくないそうです。


 お客様は40〜60代の女性が多いとのこと。年代的には心身の変化が表れる時期でありながら、同時に仕事や家事で忙しく、自分自身のケアにまで手が回らない方たちが多くいるとされます。


 そんな女性たちに、岡田さんは心身共にリラックスできる、静かなひとときを提供しています。


 このサロンの特徴は、サロン名が物語っているように、通常のサロンワークに加え、精油を販売していることと、古本が陳列されていることです。


 まず、精油に関しては、驚いたことに1滴から購入できます。


 よほどのヘビーユーザーやプロでなければ、精油を1本分買っても使い切れなかったりしますし、複数種類を揃えようとすれば高価な買い物になってしまうもの。


 一般のお客様が日常生活にアロマを取り入れるのは、ハードルが高くなりがちです。


 そのハードルを下げて、アロマを日常生活に取り入れてもらえるようにと、岡田さんは使い切れる分だけ購入していただけるシステムを取り入れているのです。


 もちろん、1滴から購入する方はいませんが、希望の滴数で購入できるとあって、お客様に喜ばれているそうです。


 また、古本の販売に関しては、子ども向けの絵本から人気作家の文庫本、専門的なものまで様々なジャンルが置かれているとのこと。


 古書店と提携していて、定期的な入れ替えやメンテナンスをしてもらっているそうです。


 岡田さんのサロンのお客様層に合うような書籍を、プロの目で選んで持って来てくれる。とてもユニークなサービスです。


 サロンのお客様が施術後にゆっくりと本を探すこともあれば、施術の予定がない日でも書籍目的でサロンを訪れるお客様もいるのだそう。


 絵本もおかれているので、親子で来店するお客様もいる。

「アロマトリートメントだけでなくて、アロマを生活の中に取り入れてもらったり、静かに本を読んだり。そういう生活に潤いを与えたり、ちょっとした楽しみになるようなものを提供できるサロンだと、お客様に思っていただけたら嬉しいですね」(岡田さん談)


 現在は、そんな素敵な空間と時間を提供している岡田さんですが、セラピストになる以前は彼女自身が心身をすり減らしながら、忙しい毎日を過ごしていたそうです。


クタクタの足がそっと温かい手に包まれる

 セラピストになる以前、岡田さんは看護師として、大きな病院で働いていました。


 看護師といえば、患者さんの心に気を配りながら、立ち仕事もデスクワークもあるし、夜勤もあるような、とても大変なお仕事です。


 岡田さんも、夜勤明けはフラフラになりながら家路についていたそうです。


 そんな岡田さんが何よりも楽しみにしていたのが、夜勤明けにリフレクソロジーサロンに立ち寄ることでした。


 体も心もギリギリの状態でクタクタの足が、そっと温かい手に包まれる。


 その気持ち良さに癒やされながら、体調が整うとともに、気持ちも穏やかになることを実感したそうです。


 サロンで過ごす間は、仕事も家事の事も忘れて、静かに安らげる時間を過ごせたと、当時を振り返ってくれました。


 こうした体験から「自分もこれを誰かに提供できたらいいな」と思うようになった岡田さんは、看護師として働きながらリフレクソロジーを学び始め、その学びの中でアロマテラピーと出合います。


 精油と香りの力に魅せられた岡田さんは、リフレクソロジーの学校を卒業した後、それまで勤めていた病院を辞め、クリニックで看護師のバイトしながらアロマセラピーの学校に通ったそうです。


 その学校を卒業してから、サロンに2店舗勤めて実務経験を積んだ後、2008年に岡田さんは地元の阿倍野にマンションの1室に個人サロン「アロマ&リラクゼーション フィール」をオープン。


 サロン名の「feel」には、五感で心地よさを感じて欲しいという願いを込めたそうです。


そもそも何で?

 こうしてセラピストとして歩み始めた岡田さんでしたが、ご自身が「勝手が分からないまま始めてしまった」と振り返るように、まさに手探りでのスタート。


 駅前でチラシを配ったり、近隣にポスティングをしたり、ホームページを自作したりと、自分でできることを探して、取り組んだといいます。


 最初の3年ほどは、経営のための数字に追われ、またお客様によくなってもらわないとという気負いばかりがあったそうです。


 そんな苦しい時期を経て、岡田さんはいつからか「楽しくない」と感じている自分に気づきます。


「今振り返れば、数字に囚われ(とらわれ)すぎやったなと思います。それに、本来はお客様ご本人で解決できるようにお手伝いするのがセラピストの役割だったのに、最初の頃はお客様に私の想いを押しつけていた感じがあったかもしれません。だんだん、それが苦しくなっていって、“そもそも何で?”って感じになりましたね」(岡田さん談)


 こうして、岡田さんは自分のセラピストライフと、自分が目指すサロンの姿について考え直すことになります。


 その頃に出合ったのが、現在、古本の販売で提携している「居留守文庫」でした。


 近隣の商店街に一風変わった書店があることを耳にした岡田さんは、客としてそこに訪れて、そのユニークなシステムに魅力を感じたそうです。


 居留守文庫のシステムは、書店の棚を借りて、そこにお勧めの書籍を置けるというもの。棚主が交代で店番するのだそうです。


 岡田さんも棚主として参加し、現在もサロンの定休日には店番をしているといいます。


 さらにこの居留守文庫には、カフェなどに古本を委託販売するシステムもあり、岡田さんもこれに参加したいと考えたのです。


 ただ、当時のサロンはマンションの1室だったため、「本を売れるスペースのあるサロンを作ろう」と考えた岡田さんは、隣町で見つけた古い一軒家にサロンを移転、古本を置くスペースを確保したのでした。


 ちなみに、精油を1滴から販売するようになったのは、先輩セラピストが行っていた方法を取り入れたとのこと。


 岡田さんがその先輩に同じことをしたいと申し出たところ、「どんどん真似して!」と背中を押してもらえたそうです。


 こうして岡田さんのサロンは、2019年に「アロマセラピー フィール ときどき精油と古本」という、現在のスタイルになったのです。


「まだまだやりたいことがあります」と笑顔で話す岡田さん。


 サロンとして利用している一軒家には2階もありますが、十分に活用できていないそうです。


 また、岡田さんがサロンワークにあたっている最中には、古本や精油の購入を目的としたお客様に応対できる体勢になく、事前の問い合わせが必須の状況なのだそう。


 予約なしに、ふらりと立ち寄れるような、そんなサロンの活かし方も考えていきたいと、岡田さんは語ってくれました。


「施術においては、アロマの香りや、タッチングの温かみを通して、“大事にされている”とお客様に感じてもらえると嬉しいです。“明日からまた頑張れる”という気持ちになって欲しい。そして、古本との出会いやアロマを日常に取り入れることが、お客様の生活に潤いや豊かさになってくれるといいですね」(岡田さん談)


 セラピーを楽しみにして、仕事や家事を頑張れる。好きな本があるから、静かに心を整える時間が持てる。


 セラピストになる以前の岡田さんは、きっとそうやって自分を元気づけてきたのだろうと思います。


 かつての自分が求めていた時間と空間を、今は岡田さん自身が提供する側になっている。


 そう考えると、やはりセラピストはどんな経験もセラピーに活かせる、とても素晴らしい仕事だといえます。


 そして、岡田さんのお話を伺っているうちに、「セラピストは、あるいはサロンはこうあらねばならない」というイメージに囚われていないかと、自分に問いかけている私自身がいました。


 岡田さんのサロンには、まだまだ活用の余地が残っているとのことでした。


 これから彼女がどのようなサロンを作り上げていくのか。楽しみにしたいと思います。


校長からのメッセージ

 現在、岡田さんのサロンのお客様は、リピーターが8〜9割を占めるそうです。


 新規のお客様は、SNS(インスタグラム、フェイスブック、ツイッター)で情報を発信する中で、問い合わせがくるとのことでした。


 例えば、インスタグラムでは、#(ハッシュ)タグの付け方を工夫していて、投稿内容もセラピーのことだけじゃなく、絵本のことやグルメ、近隣のお店、街のイベントなどの情報もアップしています。


 すると、セラピーとは縁がない人の目に触れる機会が増え、投稿を辿ってサロンに興味を持ってもらえることもあるそうです。


 さて、今回はサロン名に「ときどき精油と古本」と付いている、ユニークなスタイルを実践している岡田さんにお話を伺うことができました。


 私が知ってる中では、サロンで古本の販売をしてる事例は記憶にありません。


 また、インタビュー前は、セラピーに関する本を扱っているのでは?と想像していたのですが、良い意味で想像を裏切られた結果になりました。


 本が好きな人にとっては、良い本に出合い、本の世界に浸る時間ことが、気持ちを落ち着かせたり、ウキウキしたり、知的好奇心が満たされるような、かけがえのない体験です。


 それも一種のセラピーと言えるように思えます。


 そんな本の魅力とセラピーが1つのサロンに同居することは、考えてみればけっして不自然なことではないわけです。


 どちらも、お客様の生活に潤いと豊かさを与えてくれる存在なのです。


 彼女の「本を置けるスペースが欲しいから、一軒家にサロンを移転させる」という発想自体が、セラピーサロンの在り方をより自由にしてくれる気がします。


 もちろん、何でもサロンに同居させてもよいというわけではありません。取り入れた要素によって、肝心のサロンワークに支障が出ては本末転倒だからです。


 岡田さんに、セラピーサロンに何かをプラスアルファする場合のアドバイスを求めたところ、こんな話をしてくれました。


「軸というか、ベースになるものを、しっかり持っていたら、あとはプラスアルファで付随できることをどんどんやってもいいかなと思います。だから、軸を持つ事が大切です。ただ、”ここだけは譲れない”とか“絶対こうしないと”という思いで、がんじがらめにならないようにも気をつけておきたいですね」(岡田さん談)


 軸を持ちながら、そこにがんじがらめにならない。それは矛盾しているようにみえて、実は相容れる考え方であることは、長くセラピストライフを歩む方には頷いていただけるだろうと思います。


 例えば、岡田さんも最初のサロンで自分の理想を追求したはずです。


 しかし、走り続けているうちに、どこかに無理があると気が付いて、再び自分の理想とするスタイルを考え直し、実行したことで、セラピストとしてのステージを1つ上げたのだと思います。


 最初、軸だと思っていたことが、何かのきっかけで囚われであると気づき、自分の軸は何なのかと思い悩む。そして、その奥に軸を発見する。


 それは、まるでタマネギを剥くようなもので、自分が思っていたより奥があると気付いた時、新しいステージに立てるのではないでしょうか。


 最初から完成されたセラピストはいません。


 今、第一線で多くのお客様や生徒に慕われているセラピストも、駆け出しの頃から、ずっと自分の奥を探検し続けて、徐々にシンプルで強い軸を発見してきたはずです。


 長くセラピストライフを歩むこととは、自分の囚われという皮を剥いて、その奥に軸を探すこと。その繰り返しなのかもしれません。


 そして、そうやって生み出されてきた、セラピストそれぞれのスタイルは、それぞれにとても魅力的だと、私は思うのです。


アロマセラピーフィールときどき精油と古本

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アロマ&リラクゼーション feel

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