大阪堺市にて、自宅サロン「とろり」を運営、一般の方へのレッスンプログラムも提供している、Rinaさんのセラピストライフを紹介します。
Rinaさんは、これまで2006年から15年にわたってサロン「とろり」にお客様をお迎えしています。
メニューは、リフレクソロジー、整顔、腸セラピー、自律心体美バランス療法を、お客様1人ひとりに合わせて提供する、完全オーダーメイドです。
「自律心体美バランス療法」とは、頭蓋調整や足裏への刺激を含めた全身のケア法で、Rinaさんの経験から生み出されたオリジナルメソッドです。
身体だけでなく心も整理される場として
現在のお客様の多くは、40〜50代のプレ更年期から更年期世代の女性。ほとんどがリピーターで、開業当初から通っている方もいるので「お互いずいぶん歳を重ねましたね」と笑いながらお話ししたりもするそうです。
お客様の目的は、定期的な身体の調整はもちろんのこと、前回の来店以降でどんな事があって、どんな気持ちになったなど、心の整理の場にもなっているようです。
サロンに入るやいなやで話しだし、カウンセリングをして、服を脱いでベッドに横たわるまで、ずっとしゃべっている方もいるそうです。
その間、Rinaさんは聞き手に回って、お客様の心身の状況を察するようにしていたりと、笑顔で語ってくれました。
彼女は短大で心理学を学んでいたということもあり、サロンワークでは常にお客様と気持ちを共有するようにしているそうです
お客様の不調が実は人間関係や夫婦関係の悩みから来ていることもあって、サロンでお話しすることでお客様の中で気づきがあり、悩みごとから解決されたときに、不調の改善とともに身体が柔らかくなるという経験もしたとのこと。
「お客様には、職場などで責任ある立場にあり、普段は聞き役を担っていて、自分の感情に蓋をして日々を過ごしているような方もいます。だから、ウチのサロンでは、お客様には喋ってもらうようにしているんです。お客様にとって本当の自分をさらけ出せる場でありたいし、自己開示をすると気も楽になって、体も緩んでくるんですね。だから、どんどん出して欲しいんです」(Rinaさん談)
生涯現役でずっと現場に立てる仕事とは
Rinaさんは、もともとアパレルショップに勤めていました。
洋服も好きで、接客が好き。コーディネートを提案して、お客様に笑顔になってもらうことにやり甲斐を感じていたそうです。
そんな彼女ですから、どんどん実績を積んでいき、2年ほどが経ち、ついには店長を任せられるようになりました。
そのままステップアップしていけば、複数の店舗を監督するスーパーバイザーとして、本部に引き上げられる可能性も大きかったそうです。
そんな先行きが見え始めた頃、Rinaさんはアパレルショップを辞めようかと考え始めます。
接客が好きで、ずっと現場にいたいという、自分の本当の気持ちに正直でありたいと思ったのです。
「生涯現役で、ずっと現場に立てる仕事は何だろう」と悶々としていたRinaさんは、セラピストという仕事に新しいステージを見出します。
実は彼女は、10代の頃からずっと低体温と極度の月経痛に悩んでいて、社会人になってからはその解決のためにいくつもサロンに通っていたそうです。
その中でも、リフレクソロジーで自分の体質が改善していくことに感動して、セラピストという生き方に興味を持っていたといいます。
Rinaさんにリフレクソロジーを紹介したのは、本当に仲の良かった妹さんでした。
彼女がセラピストを新しい道として選んだことも心から応援してくれていた一番の存在でした。
Rinaさんは「スクール卒業したら、自分でお店やるからな! 来てや!」と妹さんに固く約束していたそうです。
これを無駄になんかできない、との想いから
しかし、スクールに通い始めたRinaさんに1本の連絡が入ります。
それは、妹さんが亡くなったという訃報でした。
その報せを受けたときの彼女の気持ちを到底推し量ることなどできません。
それだけでなく、お母様は悲しみのあまりにうつ病を発症してしまいます。
深い悲しみの中、Rinaさんは「これを無駄にしてはいけない」と決意を強くしたそうです。
スクールで技術を習得した後、Rinaさんはサロン勤務しながら、インストラクターとして多くの後進を育てるようにもなります。
セラピストとして充実した日々でしたが、その中で彼女はある思いを募らせていきました。
サロンに勤務するセラピストなら、そのサロンのメニューをすることになります。
また、スクールのインストラクターなら、カリキュラム通りに教えることになります。
そのマニュアル化されたスタイルに、Rinaさんは違和感を感じ始めたのです。
「身体はみんな違うはずなのに、することは同じ、ということに抵抗があったんです。それは、みんなが同じ服を着ているのと同じようなものなんじゃないかって。じゃあ、自分でお店を作ったら、お客様1人ひとりに合わせてメニューを提案できるなって思いました。同時に、きっと私みたいなタイプのお客さんもいて、“自分だけのメニュー”が欲しいんじゃないかって考えたんです」(Rinaさん談)
こうして2006年。マンションの部屋を借りて、Rinaさんはサロン「とろり」を開業します。
以後、何度かの移転を経て、現在の自宅サロンに至ります。
Rinaさんのサロンは、彼女が望む生き方の表現であるともに、妹さんとの約束でもあります。
それだけではありません。うつ病を患ったお母様の介護経験が、彼女に様々な学びと経験をもたらし、のちに自律心体美バランス療法へとつながっていくのです。
「サロンを続けてきて思うのは、妹のこと、母のこと、娘のことも含めて、私が経験してきたことすべてが活かされているということです。同時に、人の人生に関わる仕事なんだなと思うんですね。私は、セラピーを通じて接した人が変化するきっかけでありたいと思います。この仕事って、そういうところがまた楽しいんです」(Rinaさん談)
求めてくれる人が1人でもいるならば続けていきたいし、誰にも言えないことを話せる場所であり続けたい。
そのためには、セラピストしても常に変化し続けていきたい。そう笑顔で語るRinaさん。
その笑顔に自然に心を開き、ベッドの上で「とろり」と横たわるお客様の姿を、私はインタビューの中で思い浮かべていました。
校長からのメッセージ
リラクゼーションサロン「とろり」の平均的なトリートメント時間は150分で、平均単価は25,000円ほどです。
現在は、お迎えするお客様は1日で2人までとし、週に4日ほどサロンを営業しています。
先にも書いたように、お客様の多くはリピーターで、その1人ひとりとRinaさんは長い期間をかけて関係性を深めてきました。
お客様がどんな生き方をして、どんな経験をしてきたのかも折り込んで、サロンワークに反映させていくそうです。
なお、新規のお客様は、多くは既存のお客様からの紹介だそうです。
さて、【レッスンセラピスト編】も含め、インタビューの中でRinaさんが何度も話してくれたワードに「変化」という言葉がありました。
「私が経験したことを、どう変換してお伝えすればお役に立つかなと、いつも考えています。お客様に飽きられないようにということもありますが、私自身が変化し続けることが好きなんでしょうね。変化していないと、やっていけないんで私」(Rinaさん談)
そう笑顔で彼女は自己分析をしてくれましたが、自分のサロンワークによって、お客様が良い方向へと変化していくことも、彼女にとっての喜びのようです。
それは、きっとアパレルで働いていた頃から変わらないのだろうと思います。
身に付ける服によって「新しい自分」に気づいてもらい、お客様が変わっていくということに、Rinaさんは接客におけるやり甲斐を感じていたのでしょう。
それだけではなく、アパレルで身に付けた観察眼も、彼女のサロンワークに活かされているのではないでしょうか。
鋭い観察眼があってこそ、お客様の変化に敏感に反応でき、その変化を喜んであげられるのです。
すると、お客様は「自分を見てくれている」と強く思う。
さらに彼女自身が深い悲しみを知り、また心傷ついた母親に寄り添い続けてきた経験は、それを口に出さずとも、彼女の優しさと明るさに変換されて、お客様を惹きつけているのかもしれません。
明るい笑顔でインタビューに答えてくれるRinaさんを見て、彼女のサロンに通い続ける方々の気持ちが少し分かったような気がしました。
「生きていれば誰もが挫折することもあるはずです。でも、その経験が活かされる場もあるはずだと思っています。それに“気づいてもらうためにはどうすればいいのか”と考えることで、メニューの幅もアイディアも広がってきました。私との関係を通して、気づきを得て、変化してもらえる場であり続けたいです」(Rinaさん談)
カラダの声に耳傾けるサロンとろり