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上田健二さんのセラピストライフ〜パフォーマンスコーチ

2021/11/02
上田健二さんのセラピストライフ〜パフォーマンスコーチ

 山口県宇部市にて、18年にわたってカイロプラクティック院を運営する一方で、「パフォーマンス・コーチ」としても活動している、「idomus(イドムス)」の上田健二さんのセラピストライフを紹介します。

 

 上田健二さんは、カイロプラクティック歴18年のカイロプラクターです。ただ、院内で行うカイロプラクティック以外にも、お客様をサポートするスキルを持っていて、院外でも活動できるのが彼の特徴といえます。

パフォーマンス・コーチとしての歩み

 上田さんの活動を簡単に説明すれば、カイロプラクター、コンディショニング・トレーナー、スポーツメンタル・コーチの3つのスキルを有機的につなげて、お客様のパフォーマンス力を高め、本番でそれを発揮できるように導くことです。

 

 上田さんのお客様にはスポーツ選手も多く、陸上競技の国体選手のトレーナーもしたこともあります。医師を目指す学生の受験をメンタル面からサポートすることもしているそうです。

 

 具体的には、セッションを通してお客様の内側から目標を引き出し、そして目標達成のためのモチベーションも引き出します。

 

 さらにトレーニングの指導もするし、体の調整もする。場合によっては試合にまで帯同してサポートすることもあるそう。

 また、大人数を相手にウォーミングアップやストレッチの講座をすることもあるといいます。

 

 こうした活動を一言で表現できる肩書きがないため本稿では上田さんと相談した上で、「パフォーマンス・コーチ」と呼ぶことにします。



治療院を持つことがゴールではなかった

 インタビューを通して上田さんがパフォーマンス・コーチとして活動するまでの歩みを伺いました。

 

 彼がカイロプラクティック院を開業したのが18年ほど前のこと。

 それまでにスポーツトレーナーの学校へ通い、スポーツクラブで様々なレッスンを担当。そして、独立して自分の道を歩むためにカイロプラクティックも学んだそうです。

 

 人に寄り添ってともに成果を達成できるスポーツトレーナーという生き方に魅力を感じていたそうですが、体のケアも重要であると考えたことと、独立するとなれば「治療院を持つ」ことが経済的に自立するための第1歩だと考えてのことでしたと、インタビューの中で振り返ってくれました。

 

「独立するための方法としてピンと来たのが、治療院を開くことでした。でも、それがゴールじゃなくて、やはりトレーナーとしても活動したいとも考えていました」(上田さん談)

 

 こうして「上田カイロプラクティック」を開業し、カイロプラクターとスポーツトレーナーの二つのステージが始まります。

 

 その後、少年野球の監督をしているお客様から相談されたことをきっかけに、中学生の選手向けにストレッチやウォーミングアップの講座もするようになったとのこと。


  また、上田さんは心理学への興味から、柔道金メダリストの石井慧氏のメンタルコーチをしていた方の門を叩き、メンタル面でのサポートも開始します。

 

 そして、活動の幅が広がっていくうちに、「上田カイロの院長」という肩書きに窮屈さを感じるようになり、「カイロ=身体調整」というイメージにとらわれずに活動するために「idomus(イドムス)」という事業を立ち上げることになります。



教えるのではなくて、引き出す

 これまでの歩みの中で、とくに上田さんの今のスタイルに大きな影響を与えているのが、メンタルコーチングの師の「教えるのではなくて、引き出す」という言葉。

 

 たとえば、目標とする試合があるとして、それに向かってどのような準備をすべきかということをコーチは理論的に知っていて、スケジュールを組むことができます。

 

 しかし、それをただ教えることが、必ずしも選手のモチベーションを引き出すことにはならないのです。

 

 なぜならば、それは選手本人が決めたことではないから。人に言われた通りに「やらされる」というのではやる気がでないという経験を、誰しもがしているはずです。

 

 それよりも、自分で「こうしたい」という意思を示した時の方が、やる気が起きるだけでなく、パフォーマンスもあがります。

 

 メンタルコーチングで重要なのは、選手に判断材料としての理論と客観的な現状を伝えることと、選手が間違えないようにサポートすること。

 そして、目標を決めるのはあくまでも選手であることなのだそうです。

 

 もちろん、それでもモチベーションの維持が難しいこともあるので、選手に寄り添って励まし続けるのも、メンタルコーチの役割なのでしょう。

 

「心の状態によってパフォーマンスが変わるのは、自身が学生時代に空手をしていた頃からなんとなく分かっていました。トレーナーとして活動する時も気持ちの面からのサポートを自然にしてきたと思います。そうやって自分が体験的にわかっていたことを、改めて体系的に学び直すことができたんです」(上田さん談)



次のステージに向けてメンタルコーチを

 このような学びと実践の中で、上田さんがサポートできるお客様は、スポーツ選手に限らなくなりました。学生でも、経営者でも、会社員でも、目標設定とモチベーション維持の大切さは同じだからです。

 

 日本では、学生時代に競技に打ち込んできた経験が、受験や社会人生活と切り離されて考えられる傾向があります。評価されてもせいぜい「体力がある」とか「我慢強い」など。

 

 しかし、大会や試合という目標設定があって、それに向けてスケジューリングして、着実にパフォーマンスを高めていく。

 

 何か上手くいかないことがあれば、微調整しながら目標に向かって計画を進める。課題があれば、前向きに取り組んでいく。

 このようなスポーツでの経験は、実は社会生活でも適応できる思考であるはずです。

 

 上田さんは学生たちに指導してきた経験からこれを課題として考えていて、例えば部活を引退した高校生の受験や、次のステージに向けたメンタルコーチの塾なども、オンラインも含めて今後は取り組んでみたいと、笑顔で語ってくれました。

 

「18年前の開業当時にやりたかったことが、やっと今できはじめています。自分の活動が広がってきて、それが選手にも喜んでもらえている。自分としても“今後どうしていこうかな”と考えるとモチベーションが上がりますね」(上田さん談)


校長からのメッセージ

 上田さんの活動については、例えばコーチングでは半年間の継続サポートで150,000円くらいなのだそうですが、お客様の年代やサポート内容によって料金体系はまちまちです。


 なお、新規のお客様は、既存のお客様からのご紹介が多く、HPやブログからつながることもあるそうです。

 

 さて、前述したように上田さんは少しずつ自分の目指すスタイルを作ってきました。

 それはまるでパズルのピースを集めるようなものです。すると、その活動は1つの肩書きに収まらなくなっていきます。

 

 本人の中では絵面としてピッタリと収まっているのに人に説明する時に困る、というセラピストはたくさんいることでしょう。

 これはフロントランナーとして活動する故の悩みかもしれません。

 

 まだ世の中にない活動の仕方をする、言い換えれば「肩書のない仕事」をするという場合に、お客さんに自分が提供するサービスを理解してもらうことはとても難しいものです。

 

 上田さんの場合、トレーナーという肩書きからスタートして、次にカイロプラクターという看板を掲げました。

 トレーナーやカイロプラクターという仕事は、人々の頭の中にあるので、そのサービスを求めるお客様が来院します。

 

 ただ、上田さんは「脱カイロの先生」のために、カイロとは別の看板「idomus(イドムス)」を掲げることで、活動の自由度を高めるということをしていきました。

 

 メンタルコーチの存在と重要性は、スポーツの最前線では認知されつつあると思われますが、一般レベルでの認知度はまだまだでしょう。

 あるいは、存在を知っていても、それはトップレベルの話で、学生レベルでは不要と考える人もいるかもしれません。

 

 この場合、まず一度体験してもらって、その意義を感じてもらうことを彼はし続けたのです。

 上田さんは、コーチングの学習期間にそれまでに出会った100人に無料でセッションを受けてもらうことで経験を積んだそうですが、これらのアクションは何をして何ができるのかを知らせ広める大切な一歩であったに違いありません。

 

 本講では仮に「パフォーマンス・コーチ」と呼んできましたが、そのような新しい活動スタイルが定着するためには、時間が掛かるかもしれません。ですが、同じような思いを持つ人は必ずいるはずでしょうから、後進の育成もぜひ視野に入れてほしいと思いました。

 

 選手としての競技人生は、その人の人生の一部であって、引退後の人生の方がずっと長いものです。学生スポーツなら、それは尚更です。

 

 日本は学生スポーツが盛んな国だろうと思います。

 だからこそ、競技人生の間だけでなく、その後の人生も視野に入れてサポートできる。彼のような存在が増えることは、日本の社会全体を元気になることにもつながるのではないでしょうか。

 

「人の成長に携わらせてもらっているというのは、ありがたいことだと思います。競技というよりも、その人の人生に関わっていると思うと、すごくやり甲斐があります。」

 

 そう笑顔で語る上田さん。彼自身のモチベーションを上げる力が、きっとこれからもお客様や生徒に伝わっていくのでしょう。

 

idomus

https://idomus-inc.com/