北海道札幌市にて4年にわたって自宅サロン「coco smile」を運営している、吉田美幸さんのセラピストライフを紹介します。
「coco smile」の吉田美幸さんは、一軒家の自宅の1室をサロンとして使い、お客様をお迎えしています。
提供するのは、オーガニックのホホバオイルを用いたボディやフェイシャルへのトリートメント、ホットストーンを使った施術など。体を温めながら全身の血流を促す、心身ともにリラックスしてもらえるように工夫されたメニューです。
ゆっくりと寛いでいただくための、一日ひとり。
お客様は忙しい毎日を過ごす30〜50代の女性で、溜まった心と体の疲労を和らげるために吉田さんのサロンを訪れます。
平均的な施術時間は120分ですが、他にもカウンセリングや足湯の時間があったり、施術後にゆっくりと寛いでいただくために、4、5時間滞在されるお客様もいるそうです。
こうしたスタイルなので、吉田さんはサロンにお迎えするお客様を、1日にお一人と決めています。
「お客様の多くは、私と同年代の40代。この年代は女性にとって体が変わる時期で、疲れが溜まりやすかったり、無理ができない時期。不調を感じる方も多くいます。その辛さを軽減して、その先5年も10年も元気に過ごすために一緒にがんばりましょうという気持ちを伝えています。“目標は元気なおばあちゃんになること”と、お客様と笑いながら話しています」(吉田さん談)
セラピストになる以前の吉田さんは、家庭を温かく守る妻であり、3人の子どもたちの母でした。
ただ、人に触れるのも、触れられるのも好きだったのだそうで、お母様にマッサージしたり、自分でもサロンに行って施術を受けてもきたといいます。
子育てが一段落付いた頃、吉田さんはフットマッサージを学びたいと考えます。
当時、お母様の調子が優れず、それを少しでも和らげてあげたいという思いがあり、フットマッサージなら自宅でもできると漠然と考えたのだそうです。
札幌市内で個人で教えてもらえる場所を検索し、見つけたサロンに吉田さんは施術を受けに行きました。
そこで受けたボディへのオイルトリートメントの気持ち良さに驚いて、彼女は本格的にセラピーを学ぼうとしたそうです。
そうしてセラピーを学ぶ中でサロンを持つことも視野に入ってきて、自宅サロンの経営についてブログで書いていた先輩セラピストにもアドバイスをもらうなど、徐々にイメージを膨らませていきます。
吉田さんが最初にサロンを開いたのは、当時暮らしていたマンションの一室でした。その後しばらくして引っ越すことになり、現在の一軒家に移転します。
聞くところによると、自宅でサロンを開くことを前提に新居を探したそうです。
そして、見つけた物件はリノベーション住宅で、土台と柱以外は部屋を設計できたと話してくれました。
ですので、サロンとしての部屋を家の2階に確保でき、また別の事業を経営している旦那さんの事務所スペースも設計したそうです。
「家族の理解と協力があって、サロンを続けられています。子どもたちが学校に行っている間にお客様をお迎えしていて、主人は私のサロンに予約が入ると外へ仕事に行くか、自宅にいても生活音がしないようにしていてくれたんです」(吉田さん談)
もちろん、生活音がするかもしれないことをお客様にお伝えし、了承を得るようにもしているのだそうです。(なお、現在は旦那さんは別に事務所を構えているとのことです)
居心地の良い場所であり続けたい
自宅サロンの経営に取り組んできた4年間について振り返っていただくと、やはり当初は集客が思うようにいかなかったそうです。
それでも、近所へのポスティングでサロンの存在を報せていくうちに、徐々にリピーターが増えていき、口コミでのご紹介も増えていきました。
サロンを繰り返しご利用いただける理由について、吉田さんはお客様に聞いたことがあるそうです。
すると、「否定せずに受け入れてもらえるから、話がしやすい」と答えてくれたそうです。
他にも、ひとしきり話した後で「私、普段は人見知りなんですけど」と打ち明けられたことも。
リラックスしてもらえる施術もさることながら、話しやすい空間作りと吉田さんのお人柄が、お客様の気持ちを開放的にさせるのかもしれません。
「居心地がいいと言われるとすごい嬉しいんです。サロン名の“coco smile”のココは、心地良いのココなんです」と笑顔で話してくれました。
今後も長くお客様にとって居心地の良い場所であり続けたいと語ってくれた吉田さん。
これからは、お客様へのアドバイスについてもっと工夫をしていきたいそうです。
「例えば、パソコン仕事の合間にできるような運動とかストレッチとか。日常に手軽に取り入れられて、疲れを満杯までに溜めないような方法について、お客様1人ひとりに合わせてお伝えしていければと思います。その積み重ねが5年後、10年後の私たちの体になってくると思います」(吉田さん談)
サロンでのおもてなしで出している漢方ハーブティも、日常に取り入れられる方法の1つとして、販売をしていくそうです。
吉田さんは「お客様が喜んでくれるから、続けられるのかな」と笑顔でインタビューに答えてくれました。
これからも日常に疲れたお客様たちが羽を休めに来て、そして元気になって日常に戻っていく。そんな光景が、これからも彼女のサロンでは繰り返されていくのでしょう。
校長からのメッセージ
吉田さんのサロンでの平均的な施術時間は120分(平均単価は約10,000円)だそうです。
ただ、前述したようにお客様の滞在時間が4時間にもなることもあるような「長逗留(ながとうりゅう)」ができることも、お客様にとっては嬉しいことなのでしょう。
お迎えするのは1日に1人なので、受け入れられるお客様も、おもてなしをする吉田さんも、時間に急かされることなく、ゆったりとした時間を過ごせるそうです。
こうしたスタイルであるために、お客様にとって「私だけの時間」と感じてもらえるし、いつも時間に追われている人にとっては何よりの贅沢なのかもしれません。
さて、自宅サロンを営むセラピストさんとの会話の中でよく話題に上がるのが、やはり「家族との関係」です。
吉田さんの場合、旦那様から反対をされることなく受け入れてもらえたそうですが、そこには旦那様も事業を営んでいることも関係しているのではないかと思います。
つまり、同じ事業主として、気持ちが分かるのではないでしょうか。
もちろん、サロンを始めるまでに吉田さんが築き上げてきた、家族との信頼感も大きいはずです。
妻として母として家庭を大事にしてきたことが積み重ねとしてあり、またサロンを始めてもそれは変わらないだろうという信頼。
実際、吉田さんのサロンではお客様の最終受付を14時までとしていて、夕飯などの家事に響かないようにしています。
また、子どもたちが小さいうちは、基本的に土曜日には予約を入れず、子どもたちのスポーツの応援などができるようにしていたそうです。
お話を聞いていると、吉田さんはサロンと家族をバランスよく保っているように思いました。
父親も母親も自分の生き甲斐を持って元気にしていて、かつ子どもたちに寂しい思いをさせないことは、きっと家庭内の雰囲気を心地良くするためにも、またサロン運営への協力を得るためにも大切なことなのでしょう。
吉田さんがこうした家庭を大切にしたサロンスタイルをとったことは、お客様の傾向にも影響しているかもしれません。
彼女と同世代で環境の近い女性は、サロンに来やすい(受け入れやすい)時間帯が重なりやすく、共通点が多いほどその傾向は強くなるはずです。
つまり、家族を中心にしたサロンワーク(営業日や営業時間など)であれば、同じような時間の使い方をしている人にとって都合が良くなるというわけです。
セラピストが自分の活動しやすいスタイルを追求した結果、同じような属性を持つお客様が集まるという傾向はあるように思えます。
こうした考え方は、サロンの営業スタイルや、メニュー構成などにも、良いヒントになるでしょう。
もちろん、1度決めたスタイルをずっと続ける必要はありません。
セラピストもリピートしてくださるお客様も、同じように歳を重ねるし、ライフステージも変化していきます。
それに合わせて、サロンの形態(時間帯やメニューなど)を変えていくことは、お客様と長くお付き合いしていく上で、自然なことだろうと思います。
実際、吉田さんも、開業当初は同じ子育て世代をメインに考えていたそうですが、今はそれよりも対象年齢が上がっている(プレ更年期〜更年期世代)ようです。
セラピスト自身が自分と家族のライフステージに合わせて、サロンのスタイルも変化させていく。同時に、お客様と長くお付き合いする内に、求められるメニューも変わっていく。
こうした自然な変化ができることは、個人サロンを持つセラピストにとって強みとなるはずです。
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