愛知県を中心に、15年以上にわたってオリジナルのセラピーセッションと育成、さらにNPO法人日本セラピーブリッジの代表理事を務る、いわば「社会活動セラピスト」の藤川佐智子さんのセラピストライフを、2つに分けてご紹介します。【育成セラピスト】編はこちら
社会活動セラピストとして活動を始めたのは
NPO法人「日本セラピーブリッジ」代表理事として、愛知県を中心にセラピスとして社会活動する、いわば【社会活動セラピスト】の藤川さん。
そもそも藤川さんがなぜNPO法人を設立するに至ったのか?を聞くと娘さんのご病気のために通院する中で浮かんだ、ある強い思いからなのだそうです。
「医療の現場にもセラピストが役に立てる場があるのではないか?」
「医療における選択肢の1つとして、セラピストが関わることができるのではないか?」
「医療に関わりたいと考えているセラピストのための、学びの場があってもよいのではないか?」
こうした思いから、癒しと医療をつなげるプロジェクトとして、2016年にNPO法人「日本セラピーブリッジ」を設立します。
現在の活動としては、月に数度、研修勉強会や各種講習会などの開催をしている他、「クリニック新聞」を毎月発行しています。
実際にセラピストとして社会活動を行う中で分かった事について聞いたところ、癒しと医療がつながっていない現状について話してくれました。
まず、藤川さんと同じ思いを持っている人や、すでに医療の現場で既に活動しているセラピストがいることが分かった一方で、癒やしと医療のつながりを求めていないセラピストもいるということに気づいたそうです。
癒やしと医療をつなげ、関係を深めていくという試みにおいては、セラピストだけでなく医療従事者や関係者の参加がとても大切になります。
ですから、セラピストと医療関係者の双方に活動の意義を丁寧にお伝えし、賛同者を地道に集め、「チームになること」が何より大事であるとのことです。
次に、活動を続けていくために必要なものを聞いたところ、きっぱりと「理念」だと言いました。
理念がなければチームはバラバラになってしまう。だからこそ、その思いが薄まらないように、常に理念を共有することが大切なのだそうです。
理念を大切に。適材適所で。
今後、どのようにしていきたいですか?という問いには、
「この社会活動においては、私は代表という立場でもあるので、集まってくださる方お一人お一人を見て、適材適所でより力が発揮できるような環境を整えることが、私に課せられた役目だと思います」
と答えてくれました。
また、毎月発行している「クリニック新聞」をボリュームアップして、将来的には『暮らしの癒学』のような書籍として、広く社会に共有してもらえるようなものも生み出していきたいそうです。
校長からのメッセージ
社会的な問題の解決を取り込んで経済活動を起業する人のことを、最近では「社会起業家」と呼び、1つの起業スタイルとなりつつあります。
こうした流れを考えると、今後、社会活動に取り組むセラピストが増えていくことは十分に考えられます。ただし、社会活動を「自分のセラピーを行う場」であると考えがちなので、注意が必要です。
社会活動で最も重要なのは、活動の目的となる「社会的なテーマ」です。
テーマがまずあって、その解決や道筋の1つとしてセラピーがあるのです。この関係性を忘れてしまうと、えてして独り善がりに陥り、結果的に人々の賛同が得られない活動になりがちです。
社会活動を進めていくためには、「社会的な課題の解決(=テーマ)」を中心に据えて様々な立場の人たちと関わり、人や物事を動かしていく必要があるのです。
藤川さんが「理念」や、ともに活動するチーム内で「理念を共有すること」の重要性について語られたのは、こうした社会活動の本質をよく表しているように思えます。
なお、藤川さんのNPO法人「日本セラピーブリッジ」は、会費が主な収入となっているそうですが、藤川さんの場合に限らず社会活動は、扱う「社会的なテーマ」が世間に深く根付いていった先に、人や物が大きく動くようになり、結果的に経済的な活動に結びついていく可能性も十分にあるのではないでしょうか。