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遠藤公子さんのセラピストライフ~個人サロンセラピスト

2023/01/10
遠藤公子さんのセラピストライフ~個人サロンセラピスト

 東京国立市にて9年近くに渡って自宅サロン「Elyma(エリマ)」を営んでいる、遠藤公子さんのセラピストライフを紹介します。


 遠藤さんのサロン「Elyma(エリマ)」は、女性限定のプライベートサロンとして、閑静な住宅地にあります。


 彼女はここで、40〜50代のお客様に対し、アーユルヴェーダとアロマテラピーをベースにしたトリートメントを提供しています。


 遠藤さんのサロンの特徴の1つは、イタリア発の「LAKSHMI(ラクシュミ)」の化粧品と施術にあります。


 ラクシュミは、イタリア人創設者がアロマテラピーとアーユルヴェーダを融合させて生み出したオーガニック化粧品メーカー。


 アーユルヴェーダの理論に従って体質(ドーシャ)ごとに製品を使い分けるだけでなく、施術もお客様の体質に合わせて変える方法を提唱しています。


 遠藤さんは、そのラクシュミの日本唯一の総代理店である「AROMAVEDA JAPAN」の認定講師であり、後進の指導もしています。


 もう1つの特徴は、1日おひとり様だけのプライベートサロンとして、あらかじめ用意されたメニューだけでなく、お客様のご要望や、今の状態からパーソナルメニューをご提供していることです。


 フェィストリートメント、ボディトリートメント、アイケア(NETORA:ネトラ)、フットケア(PADA:パダ)、腹部への施術(UDARA:ウダラ)などを組み合わせ、お客様の体質に合わせてメニューを提案しています。


「アーユルヴェーダの理論を元に、ヴァータ、ピッタ、カバのドーシャ(体質)に分けるのですが、それぞれに使う基材も施術も違います。季節によっても、お客様のストレス状態によっても、お肌のタイプが変わることがありますので、カウンセリングを通してお客様の状態を把握して、お一人おひとりに合わせた施術をご提供しています」(遠藤さん談)


 お客様は美容目的だけでなく、健康維持のために、遠藤さんのサロンに通っているとのことですが、お楽しみはそれだけではないようです。


 遠藤さんご本人も「私、おしゃべりなんで」と笑顔で仰っていましたが、リピーターのお客様ともいつも施術前にお喋りに花が咲き、「あ、そろそろ施術しなきゃね」と笑い合うことも多いそうです。


 お客様と良い関係を構築されていることがうかがえます。


「私の今のスタイルとして、お一人のお客様のために1日を使う形なので、施術の前後もお客様には気持ち良く過ごしていただきたいと考えています。1時間のメニューでも、3時間ほど滞在される方もいますし、少しの時間、眠っていかれるお客様もいますね」(遠藤さん談)


 家事や仕事に忙しく過ごす女性たちにとって、自分だけのために用意された場所と時間ほど、贅沢なものはないのかもしれません。


 また、甘えさせてくれて、ときに優しく諭してくれる、まるで大らかな母親のような雰囲気を遠藤さんが醸し出していて、それがお客様に居心地の良さを感じさせているのかもしれません。


 遠藤さんがどのような経緯でセラピストの世界に入り、そして現在のスタイルで活動するようになったのか、そのストーリーを伺いました。


行く限り、恵方と決め、振り向かず

 遠藤さんは、以前、外資系航空会社で客室乗務員をしていました。


 そして、1991年にフランス人のパートナーと結婚。パリへ移住します。


 現地でフランス語の勉強をした後、シャルル・ド・ゴール空港で日系航空会社のグランドスタッフとして、5年ほど働いていたそうです。


 彼女が日本に帰国したのは、2005年のこと。旦那さんの仕事の関係で日本に戻り、2人のお子さんともに、13年ぶりに日本での生活を始めたのです。


 その頃は、子どもたちにまだ手がかる時期だったこともあり、遠藤さんは家事と両立できる仕事を探しました。


 しかし、思うような仕事はなかなか見つからなかったそうです。


 当時は今よりも女性の中途採用に前向きな企業が少なかった印象がありますから、遠藤さんもしばらくの間、専業主婦をしながらも、「何かできないか」と悩んでいたそうです。


 そんなある日、テレビ番組で、アロマテラピーのサロンとセラピストが紹介され、介護をしながら自宅で仕事をしているという話が紹介されました。


 遠藤さんは、客室乗務員をしていた頃にトリートメントを受けるのが好きで、フランスで生活した頃にもタラソテラピーを受けたこともあったとのこと。


 また、ご両親に肩もみをして褒められたことを思い出し、「こういう仕事もあるんだ」と思ったそうです。


 そして、翌日、地域で配られるフリーペーパーに、アロマセラピースクールの無料説明会の告知が載っているのを見て、遠藤さんは何かの縁を感じます。


「説明会に行ったら、解剖学の話とか、香りの科学的な身体への作用とか、先生の話が面白くて。その時、香りのテイスティングをさせてもらったら、それがオレンジフラワーだってすぐに分かったんですよ。なぜかと言うと、主人が毎晩その香りのアイマスクをしていたから。それを話したら先生と話が弾んでね。面白くなって、もっと学びたいと思ったんです」(遠藤さん談)


 こうしてアロマセラピースクールに通い始めた遠藤さん。

 猛勉強をして資格を取得し、2015年に自宅サロン「Elyma(エリマ)」をオープンさせます。


 聞けば、ちょうど自宅を新築するタイミングと重なったこともあり、セラピールームも設計に入れてもらっての開業だったそうです。


 ただ、「開業当初は足らないものばかりでしたね」と、遠藤さんは当時を振り返ります。


 自宅が閑静な住宅街の中にあるということもあって集客に悩み、SNSやHP、チラシのポスティングなど、試行錯誤したそうです。


 また、当時はまだ自分の施術に自身が持てなかった、と遠藤さんは言います。


 そこで、いろいろなサロンに客として施術を受けに行ったり、興味を持ったセラピストのもとに教えを受けに行ったそうです。


 さらに、彼女が学んだスクールが、イタリアの「ラクシュミ」の総代理店となったことで、遠藤さんはアロマテラピーとアーユルヴェーダを融合させた「アロマヴェーダ」の立ち上げにも参加。イタリアにも学びに行き、認定講師にもなったそうです。


「私の場合、スクールで学んだだけでは準備が足りなかったんです。開業後にもあっちこっちに行って、施術を受けたり、勉強させてもらったりしましたね。あと、ラクシュミに出合ったことも大きかったです。イタリアの本場の施術を提供できるし、使う基材にも不安がなくなりました。そうやって自分のスタイルを作ってきて、ようやく“お客様にお金をいただける”という意味で、自信を持ってトリートメントできるようになったように思います」(遠藤さん談)


 2015年に自宅にサロンを持ち、それ以降も学びを深め、自分で納得できる技術も身につけられた遠藤さん。


 これで、彼女のセラピストライフが順調に進んだのかと言えば、実はそうではありませんでした。


 彼女が年月を掛けてスキルアップをしていけば、当然、周りの環境も変わります。


 遠藤さんは、帰国以来、フランス人のパートナーが日本で仕事をする上でのサポートもしてきました。


 お子さんたちはすでに手が掛からなくなっていますが、ここ数年はご自身のご両親のお世話をする場面も増えてきたそうです。


 そう、遠藤さんの「1日おひとり様だけのプライベートサロン」というスタイルは、自分の家族のサポートをしながらも、お客様にも満足していただける形。


 それを模索する中で行き着いたスタイルなのです。


 遠藤さんは「個人のセラピストじゃなきゃできないことだし、個人のセラピストだからできること」と、今のスタイルを表現していました。


「プライベートなことで主人と一緒に悩んだこともありましたが、それを経験しなければ分からないこともたくさんあったように思います。それに、サロンでお客様をお迎えして施術する時間は、私にとっては煩わしいことを忘れて集中できる時間でもあり、とてもありがたいことでしたね」(遠藤さん談)


 そうやって、ご家族を支えながら、少ないながらもお客様と深く繋がってきたこと。


 それこそが、今の遠藤さんのセラピストとしてのスタイルを形作ってきたと言えます。


 考えてみれば、セラピストも1人の人間であり、家族や人間関係、生活、経済状況など、それぞれの環境の中にいるわけです。


 つまり、セラピスト1人ひとりのスタイルも、そうした環境とのバランスの中で生み出されていくものなのです。


 もちろん、状況は年月とともに変化していきます。


 そして、遠藤さんのセラピストとしてのスタイルも、変わっていくのでしょう。


 もちろん、遠藤さんの笑顔と懐の深さは変わることなく、もっと多くのお客様と縁を結んでいくだろうと思います。


 きっと、講師としての活動も増えていくはずです。


 コロナ禍などで自由にセラピストとして活動できず、息苦しさを感じているセラピストもたくさんいるだろうと思いますが、この状況もまた変化していくものです。


 だからこそ、まずは今という環境の中でバランスを取りながら歩むことが大切なのであり、また「苦しい時期を経験したからこそ、分かったことがある」と、プラスに転換できる柔軟で前向きな思考が大切なのかもしれません。


「行く限り、恵方と決め、振り向かず」という言葉を、遠藤さんは大切にしているそうです。


「自分たちは、その時、その場で、絶対にいい決断をしてるんだって、私は思ってるんですよね。その時々で、いい道をきっと選んでるのよって。もし、結果的に予期せぬ事が起きたとしても、そこで学びがあるはずだと、いつもそう思うようにしています」(遠藤さん談)


 そうした前向きで柔軟な思考こそが、実はセラピストに触れ合うお客様にも、楽しい刺激と、安らぎの時間を提供するために、とっても重要な資質なのかもしれない。


 ずっと笑顔で質問に答えてくれる遠藤さんを見ながら、そんなことを考えたインタビューでした。


校長からのメッセージ

 女性限定のプライベートサロン「Elyma(エリマ)」のメニューは、税込6,000円〜18,000まであり、その中でフェイストリートメント+バックトリートメント(所要時間150分、税込15,000円)が人気メニューとのことです。


 ボディやフェイシャルメニューには、足浴やドーシャチェック、カウンセリングなどが含まれているのですが、さらに目や足のトリートメントなどを追加することもできるので、自由度の高いメニュー構成ができるようです。


 1日お一人のお客様をお迎えするスタイルで運営されていることはすでにお話ししましたが、それでも平均単価は24,000円ほどになるということでした。


 現在は本編で紹介したように、たくさんのお客様をお迎えできる状態ではないこともあり、広告を出すような積極的な集客はしていないとのこと。


 新規のお客様はご紹介の他、自宅サロンの前に置いたA型のスタンド看板にチラシを見て、訪ねて来るそうです。


 サロンの近くは近隣住民の散歩コースになっているので、看板やチラシを見てくれる方は、意外と多いということでした。


 人数は少なくても、お互いに波長が合って、長く通っていただけるリピーターさんに支えられていることに、遠藤さんは「本当にありがたいし、エネルギーをいただける」と笑顔で言っていました。


 さて、遠藤さんに「セラピストとして大切にしていることは?」と聞いたところ、

「出会ったご縁を大切にすることと、相手を思う想像力を持つことかな」と答えてくれました。


「子育ての時に、子供たちによく言ってたんです。コミュニケーションとイマジネーションを大切にしなさいねって。きちんと会話して意思の疎通をすることが大事で、相手の方の立場に立って想像することも大切。ただ、そうは言っても、相手のことを完全に分かってあげることは難しいし、感じていることのすべてを言葉で表せないかもしれない。それに私ができることも、それほど多くはないかもしれません。それでも、相手のことを想像するのをやめてはいけないんだと思います」(遠藤さん談)


 そして、遠藤さんは、ふと思い出したように、こんな話をしてくれました。


 それは、ある駅前で、遠藤さんが人混みの中を歩いていた時のこと。


 彼女の足に、視覚障害者の方の白杖が当たったそうです。


 遠藤さんはとっさに「失礼しました」と言って道を譲ったのですが、その方は歩く先々で人とぶつかっていました。


 遠藤さんはすぐに追って行って、「よろしければ、途中までご一緒しましょうか」と声を掛けたそうです。


 すると、その方が「ありがとうございます」と言って手探りしたので、その手に遠藤さんは手を差し伸べました。


 その時、遠藤さんは衝撃を受けたそうです。


 その方のあまりにも優しい触れ方に、遠藤さんの全身にいろいろな感情が溢れ、言葉では表現できないような感覚に包まれて、「私がしたいのは、こういうことなんだ」と強く思ったそうです。


 改札までお送りすると、その方から丁寧にお礼を述べられたそうですが、遠藤さんもその方に感謝を伝えたい気持ちでいっぱいになっていたと言います。


「その方に触れられた時に、私の中で、ブワッといろいろな感覚が駆け巡るような感じがありました。それで、その方にお礼を言われた時、私も”ありがとうございました”って思ったんです。言葉では言い表せなくて、体験してみないと分からないかもしれないけど、私にとって忘れられない体験になりました」(遠藤さん談)


 優しさに対して、ただただ感謝する気持ち。

 不安の中で手を差し伸べられた時の安心感。

 邪念もなく純粋に委ねられた手の柔らかさ。


 きっと、どんなに言葉を尽くしても表せない、体験した者にしか分からない感覚なのでしょう。


 しかしそれこそが、タッチングを伴うセラピストにとって、とても大切な要素なのではないでしょうか。


 触れることよって、万の言葉を尽くしても表せないものを、相手に伝えることができること。


 それは、セラピストがお客様に提供している技術のベースにあるものなのだろうと思います。


 そして、それは手によって、後進に伝えられていくはずです。


 インタビュー当時は、コロナ禍ということもあって、遠藤さんが講師として生徒に指導をする機会はほとんどなくなっていたと聞きました。


 しかし、彼女のいうように「苦しい時期を経験したからこそ、分かることがある」のなら、コロナ禍で全員が苦しい時期を過ごしたからこそ、この時期を越えた時には、セラピストはより共感性を持ってお客様に接する力が養われているはずです。


 そして、その時には、遠藤さんを含めてタッチングによって感動的な体験をしたセラピストこそが、後進の育成には必要なのだろうと思います。


 いずれまた、「育成セラピスト」としての遠藤さんのお話を聞く時を、楽しみに待ちたいと思いました。


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