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岩城里美さんのセラピストライフ~個人サロンセラピスト

2022/10/07
岩城里美さんのセラピストライフ~個人サロンセラピスト

 東京世田谷にて、5年にわたって個人サロンを営み、トリートメントを提供するとともに技術やサロンワークについて伝えるスクールも運営している「SOIN SHUHARI」の岩城里美さんのセラピストライフを紹介します。

【育成セラピスト編】はこちら


 岩城さんは、20年のキャリアを持つセラピストです。


 現在は、アロマトリートメントとトークセンを組み合わせたメニューに、足湯やフェイシャル、ホットストーン、音叉などを、お客様のご要望に合わせて提供しています。


 トークセンとは、タイの伝統療法に伝わる経絡のようなエネルギーの経路などに、木の杭と木槌で刺激を与えるというものです。


 また、岩城さんのトリートメントは、ゆったりとしたリズムでありながら、しっかりと深く、筋肉にアプローチをするスタイルで、リラクゼーションでもありつつ、施術後には体のラインが変わることもお客様に好評とのことです。


 履いてきたデニムが施術後に緩くなっていることに驚かれる方もいるのだそうです。


「以前は、おしゃべりをするお客様が多かったんですけど、トークセンを入れてからかな、施術中に眠ってしまう方が増えたんですよね。木槌と杭でトントントントンって叩くので、その一定のリズムがリラックス効果があるようです。トントントンって叩かれているうちに、階談を下りていくようにリラックスしていって、いつの間にかストンっと眠りに落ちている感じです」(岩城さん談)


 聞けば、リンパの流れも改善するとのことで、施術の翌日、翌々日に、体が軽くなることを実感するお客様も少なくないとのことでした。


 もちろん、施術直後に体が軽くなることを実感する方もいて、サロンから自宅まで30分以上を歩いて帰る人もいるそうです。


 岩城さんがこれまでどのようなセラピストライフを歩み、現在のスタイルを築いてきたのか、その経緯を伺いました。


それはあらがえない性(さが)のようなもの

 現在は、和やかな雰囲気が印象的な岩城さん。


 きっとおしゃべりしているだけで、お客様は癒やされてしまう。話をしていると、ふとそんな印象を受けます。


 ところが「家族や幼なじみに聞くと、子どもの頃の私は決して表情が豊かというわけでもなく、無口な印象だったと言われます」と、岩城さんは言います。


 幼い頃の彼女は、冷静に周囲の大人たちを見ているような、物静かな子どもだったようです。


「そんなこともあって、どんどん喋るのが遅くなっていったのかもしれませんね」と、少し気恥ずかしそうな笑顔で語ってくれました。


 そんな岩城さんは高校を卒業し、10代の頃はいくつものアルバイトを掛け持ちして働いていたそうです。


 そして、将来の仕事を探す中で、「自分が得意なことはなんだろう」と考えていたとのこと。


 そこで、彼女が思い浮かべたのが「人から相談を受けること」でした。バイト仲間や友人から、なぜか度々、悩みを相談されていたのです。


  ただ、カウンセラーや臨床心理士になるには、多大な学費と年月が必要です。


 そこで、働きながら技術を身に付けられる仕事を探して、求人情報誌を捲る中で岩城さんが見つけたのが、セラピストでした。


 当時は求人情報誌に「癒やしの仕事」という項目ができた頃。岩城さんは会員制スパの従業員の募集を見つけたのです。


「先輩も同期も四大卒の方ばかりの中で、高卒の私が正社員として就職できたなんて奇跡だと思いました。新しく何かを学ぶことも楽しいし、人の身体に触れて柔らかくなっていくのも楽しいと思いました。会員制のスパだったので、言葉遣いも自分が今まで使ったことないような言葉で、それも楽しかったですね」(岩城さん談)


 そのスパでは、技術を含めて学ぶことが多く、2年目には技術を指導する立場にもなったそうです。


 その後、エステサロン、リラクゼーションサロンなど現場を変えながら、10年もの間、実績を重ねていきます。


 その間に、いくつものサロンやスクールの立ち上げにも参加したり、セラピスト養成スクールの講師も経験したりもしたそうです。


 その後、結婚を機にサロンワークから離れ、岩城さんは一般の事務職に就きます。


 しかし、彼女のセラピストライフはそこで終わりではありませんでした。


 同じ事務をする仲間が首や肩を回している姿を見て、岩城さんは居ても立ってもいられなくなって「触ってもいいですか?」と声を掛けてしまっていたそうです。


 すると、彼女のマッサージが評判になり、職場仲間や友人に施術をするようになってきます。


 その後、岩城さんは知り合いのサロンを借りて、ダブルワークスタイルとしてセラピーを提供し始めたそうです。


 体が凝って窮屈そうにしている人を見ると、触れずにはいられない。


 それは、セラピストが持つ、あらがえぬ性(さが)のようなもの。


 岩城さんもサロンを離れたからこそ「セラピーをするのが心から好きな自分」を再確認したのかもしれません。


 5年ほど働いたタイミングでとあることをきっかけにその職を離れます。


 そして、少しゆっくりしようとスリランカに1週間の旅行にいったそうです。


 スリランカでアーユルヴェーダを受けながら、自分のサロンを始めるか、どこかのサロンに勤務するか、自分の進む道を思案していたところ、たくさんの連絡が入り始めたのです。


 それは施術を受けてきた方たちが、彼女が離職したことをSNSで知っての、予約の連絡。

おそらくは彼女が独立することを期待する人たちの思いだったのでしょう。


 背中を押された岩城さんは、「よし、このまま独立しよう」と気持ちを固め、スリランカ滞在中にメニューやHPのリニューアルプランを考えて、帰国後にすぐに開業に向けて動き出したそうです。


なんか辛いなっていうときに思い出してもらえる

 こうして2017年、岩城さんはプライベートサロン「MASHIRO」を東京世田谷にオープン。その後、茶道の精神を取り込んで、2022年1月に「SOIN SHUHARI」にリニューアルしています。


 SOINとは、フランス語で「お手入れ・心遣い」のこと。そして、SHUHARI とは「守・破・離」であり、茶道や武道における修行の過程を説いた言葉です。


「私はセラピーを受けるのも好きなんですが、セラピストさんが私にしてくれる、おもてなしのすべてに感動させてもらっていて、“セラピストっていい仕事だな”っていつも思います。だから、私もそういう気持ちをお客様に感じてもらえるといいなっていう気持ちで、サロンにお客様をお迎えしています」(岩城さん談)


 私が今後の目標を訪ねると、「私、大きな目標は基本的になくて」と少し考えた後、


「ずっと思ってるのは、なんか辛いなっていう時に思い出してもらえる自分でいたい、ということですね」と、笑顔で答えてくれました。


 茶道とは、日本のおもてなしの精神の粋(すい)であると聞いたことがあります。


 茶室にいる間は、世間の喧噪も社会的な立場も忘れて、ただ、もてなす主人と、もてなされる客になる。


 そこでお茶を一服しながら1人の人間に戻る時間を、昔の人も楽しんでいたのかもしれません。


 そう考えると、確かにサロンワークにも通じるものがあるように思えます。


 体が凝って辛い時、重圧で息苦しさを感じている時、お気に入りのサロンに行けば、そこには笑顔のセラピストが迎えてくれて、素晴らしい所作で寛ぎの雰囲気とともに、体の緊張を解放してくれるわけですから。

校長からのメッセージ

 岩城さんのサロン「SOIN SHUHARI」は、1日2組限定でお客様をお迎えしています。


 お客様は10代から70代の女性で、9割がリピーター。副業セラピスト時代からのお客様で、14年近く通い続けている方もいるのだそう。また、親子3代にわたって通う方もいるとのことでした。


 技術やおもてなしのサロンワークはもちろん、岩城さんご自身が醸し出す、柔らかな雰囲気に癒やされて、帰り際に「また来ますね」と言うお客様たちの姿が思い浮かびます。


 ちなみに、新規のお客様は、以前はお客様の紹介が多かったそうですが、最近はSNS(Instagram)をきっかけに岩城さんの存在を知るようです。


 彼女のInstagramにアップされる画像は切り口がとても印象的で、サロンの雰囲気が伝わりやすく、そこから利用につながるというのも頷けます。


 さて、インタビューの中で、岩城さんがサロンワークで大切にしている習慣について聞くことができたので、ここで紹介します。


 岩城さんは、季節の変わり目などのタイミングで定期的に、お客様になりきって自分のサロンに訪れる、いわば「疑似来店」をしているのだそうです。


 玄関から入って、客としての自分が、セラピストである自分に案内されて歩くイメージをする。


 そして、座った時に見える風景はどうか、着替えの時の説明はどうか、ベッドに横になった時はどうか、とお客様目線で体験してみるのです。


 季節によって体感が変わることがあるので、ガウンの着心地や足湯の温度などを実際に自分で体感することが大切なのだそうです。


 つまり、セラピースキルだけではなく、サロンに来て、帰るまでの流れ全体をセラピーと捉え、1つも疎かにしない心構えを、定期的に思い出すようにしているようなのです。


「セラピストにとっては、おもてなしが結局一番大事だと思っています。もちろん技術ありきですけども、サロン勤めを長くする中で、いろんなセラピストを見てきて、技術の上手い人が常に人気かっていうと、そうじゃないと思っています。なので技術は技術で学び続けるんですけど、おもてなしのサロンワークは常に見直しています。自分が客としてサロンに行く時も、良いと思ったことは自分のサロンワークに取り入れるようにしています」(岩城さん談)


 移りゆく季節の中でも、あるいは年月を経る中でも、いつも変わらないおもてなしを提供したい。


 そのための定期的な「疑似来店」であり、他のサロンに行っても、あるいは別の分野のお店に行っても、感動できるおもてなしを探している。それが、岩城さんにとっての「お客様目線」なのでしょう。


 もともとは、1人で生きていくための仕事だったのかもしれません。


 ですが、それは人を活かし、人に求められる道に繋がっていた。


 岩城さんが「セラピストって良い仕事ですよね!」と笑顔で語ってくれたのと同じように、私も思うのです。


「セラピストって良い仕事だよなぁ」と。


SOIN SHUHARI

https://www.soinshuhari.com