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清野映美さんのセラピストライフ〜個人セラピスト

2022/03/18
清野映美さんのセラピストライフ〜個人セラピスト

 埼玉県さいたま市にて、10年にわたって個人サロン「結−ゆい−」を営んでいる、清野映美さんのセラピストライフを紹介します。

 

 清野さんのサロンで提供されるメニューは、タイの伝統療法である「ユーファイ」と「トークセン」を中心に、タイ式ストレッチやボディへの揉捏、下肢へのオイルマッサージなどを組み合わせたオーダーメイドメニューです。

 

 「ユーファイ」とは、いわゆる温熱療法の1つで、タイでは産後ケアのために用いられていたりするとのこと。

 

 伝統的には直火で温めたソルトポットを、ハーブやビワの葉、布などで包んで用いるのですが、これに加えて清野さんは温めた溶岩ブロックも使っているそうです。

 

 「トークセン」は、日本語に訳すと「センに打ち込む」という意味。

 

「セン」とは、タイ伝統医学に伝わる経絡のような概念であり、このセンに専用の木槌と杭を使って振動刺激を与える手法がトークセンです。

 

 トークセンには様々な理論や使い方がありますが、清野さんは筋肉を緩めたり、硬結を解いたりするためにも用いているそうです。

 

 ユーファイで温めて、トークセンで刺激を与えるという組み合わせが効果的なのだそうで、お客様を深いリラックスに導くとともに、細胞を活性化させ、自己免疫力を高めることができると、彼女は話してくれました。

 

「リラックスできて、体調が整うことは大前提ですけど、施術の前後で体型が変わることもよくあります。お着替えする場所に姿見を置いているのですが、着替える際に思わず『わー、すごい!』って歓声を上げて喜んでくださるお客様もいて、そんなときに私はすごく手応えを感じるんです」(清野さん談)

 

 最近では少しずつ認知度が上がってきたとはいえ、「ユーファイ」と「トークセン」をメインにしているサロンはあまり耳にしません。

 

 清野さんがどのような経緯で現在のスタイルで活動するに至ったのかについてうかがいました。

 


誰かの喜びの声を聞き、笑顔を見られる自分の仕事を作る

 セラピストとして活動する以前、清野さんは医療事務をしていました。

 

 その頃は「いつか結婚したら、子どもが小さいうちは自宅で何か仕事をしたい。だから手に職をつけたい」と考えていたそうですが、どんな仕事をするかははっきりと決めていなかったそうです。

 

 そんな彼女がセラピーを学び始めたきっかけは、勤めていた医院での経験でした。

 

 当時勤めていたのは、地域のお年寄りが井戸端会議のように集まる場所であり、また外出が難しいお年寄りのために訪問診療もしていた医院でした。

 

 清野さん自身、幼少時に祖父母にとても可愛がられていたこともあって、通ってくるお年寄りたちの可愛らしい笑顔が好きだったそうです。

 

 清野さんは、看護師さんが「患者さんの膝を擦ってあげたら、とても喜ばれた」と嬉しそうに話すのを聞き、医療行為でなくても人に喜んでもらう方法があることを知るとともに、いつか自分もそういう仕事をしたいと考えるようになりました。

 

 また、医師が訪問診療に行ったお宅の匂いについて、話しているのを聞いたことも、清野さんがセラピストの道を歩き始めるきっかけの1つになったそうです。

 

「高齢者特有の匂いがあることは、私も知っていました。でも、それで人に避けられたり、距離を置かれたりするのって違うんじゃないかな。だったら私がそういう家をなくそうって思ったんです。その頃、正義感にものすごく燃えていたんですね。それがきっかけで、アロマの勉強を始めたんです」(清野さん談)

 

 こうしてアロマテラピーを学び始めた清野さんは、その後どんどんセラピーの世界に踏み込んでいきます。

 

 オイルトリートメントやホットストーンを学んだ後、ホテルスパで働き、さらにエステサロンで痩身やフェイシャルなどの技術を身に付けたそうです。

 

 エステサロン勤務の頃には、自宅でもサロンを始めたとのことで、2人のお子さんを育てながらの忙しい毎日でしたが、「夢を叶えるための修行だと思って乗り切りました」と清野さんは笑顔で当時を振り返ってくれました。

 

 彼女の夢とは、誰かの喜びの声を聞き、笑顔を見られる自分の仕事を作ること。

 

 自宅サロンを4年ほど続けながら、さいたま新都心にもサロンを持つようになり、2019年に現在の場所に移転したそうです。

 


1人ひとり丁寧に向かい合い寄り添い、そして学びも止めない

 清野さんが自宅サロンを始めた頃は、エステとスパの技術を応用したオールハンドのアロマオイルトリートメントを提供していて、ユーファイとトークセンと出合ったのはしばらく経ってからのことでした。

 

 ある時、本場タイで学んだ知人からトークセンを受ける機会があり、清野さんは体がすごく緩むことを実感したそうです。

 

 そのセラピストから「この方法なら着衣でもできるし、80歳くらいまでできるよね」と言われ、清野さんはトークセンを学ぶことにしたと言います。

 

 また、ユーファイは、友人から不妊の悩みを聞いたことから、同じような悩みを持つ女性にしてあげられることを探したときに出合ったのだそうです。

 

 トークセンとユーファイを日本で学んだ清野さんは、さらに本場タイでも学び、それまでに身に付けていたサロンワークに取り入れていきました。

 

 そして実践経験を積み重ねていき、手応えを感じるようになった清野さんは、自分のサロンを「トークセンとユーファイ専門」とすることに決めたのです。

 

「今はすごく楽しいですね。タイ伝統医学には、いろいろな先生がいて、理論も方法もまだまだ学ぶことがたくさんあります。学ぶことも楽しいのですが、それがお客様の笑顔に繋がっていると考えると、すごく嬉しい。だから、まだまだ学びたいと思うんです」(清野さん談)

 

 清野さんに、個人サロンを続けるために大切なことを聞いたところ、「1人ひとりと丁寧に向かい合い、寄り添うこと。そして、自分の学びも止めないこと」と答えてくれました。

 

「お客様1人ひとりの期待に応えるためには、学び続けることが大切。すると、学ぶものは多岐にわたりますから、それは終わりの見えない旅のようにも思えるかもしれません。でも、たくさんの学びを続けるうちに、自分に合ったものが分かっていって、専門性が高くなっていくんじゃないかと思います。旅をしているうちに道が細くなるみたいに、研ぎ澄まされていくってことはあると思うんです」(清野さん談)

 

 彼女自身、お客様や友人、職場の人たちとの交流から気づきを得て、出会った人たちを笑顔にするために学び続けてきたのです。

 

「学ぶことでどんどん深みにはまってきますが、好きだからもっと学びたい」と清野さんは笑顔で話してくれました。

 

 学んだ知識や技術で誰かが笑顔になるたびに、彼女の内側からさらに学ぶ活力が湧いてくる。 

 そんな内燃機関が彼女を前に進ませているのではないか。

 

 彼女の笑顔を見ながら、そんなことを考えたインタビューでした。


校長からのメッセージ

 清野さんのサロン「結−ゆい−」は、週5、6日営業し、女性限定で1日2人までのお客様をお迎えしています。

 

 お客様は健康維持を目的とした30、40代の方が多く、現在はほぼリピーターの方なのだそう。

 

 清野さんはお客様と近況や体調についてうかがいながら、1人ひとりに合わせたメニューを提案しているということです(2H 13,200円〜)。

 

 興味深いことに、お客様には看護師や助産師さんも多いそうで、体を温めることの大切さをよく知っている人たちが、深いリラックスをしつつ、日々の疲れをリセットするために通っているのだろうと思います。

 

 また、トークセンやユーファイのように、着衣のままできる施術は、イベントなどの様々なシーンで実践できるため、活用の幅が広いように思えます。

 

 清野さんも、サロン経営と合わせて、セルフケアやホームケアとしてトークセンを使う講座を設けているそうです。

 

 

 清野さんのサロンのお客様の多くはリピーターですが、新規のお客様はSNS (InstagramやFacebook)や、ネット版のフリーペーパーを見てアクセスしてくるということです。

 

 特にInstagramなどに掲載した写真や動画を通じて、彼女のセラピーに興味を持つ方も多いようです。

 

 さて、インタビューの中で今後の展開を聞いた時に、清野さんは「60歳になったらタイに住む。そう家族に言っているんです」と笑顔で答えてくれました。

 

 日本とタイの2拠点生活をしながら、タイのセラピーだけでなく、文化やアイテムを日本に紹介したいのだそうです。

 

 この話題の際に、清野さんは突然「あ、私、タイで農場やりたい! 今、降りてきました!」と新しいアイディアを思いついて、明るい笑顔を見せてくれました。

 

 実は、清野さんは現在、郊外に150坪ほどの畑を借りて、毎朝農作業をしているそうです。

 

 ご実家が農家で、清野さん自身もずっと家庭菜園を続けていて、ついに1年ほど前から広い土地を耕し、畝を作り、トウモロコシやナスなどの作物を育てているとのこと。

 

 自然を相手にする本格的な農作業からは学ぶことがたくさんあり、両親を「師匠」と仰ぎながら、土に触れ、朝日を浴びることの大切さを味わっていることを、楽しそうに話してくれていました。

 

 また、「都会に住む人向けの農業体験を通したセラピー」も、インタビュー中に彼女に“降りてきた”アイディアで、これは60歳を待たずに実行できるプランだと思いました。

 

 ちなみに、80歳になったら、野菜を育てつつ、縁側で健康や子育てで悩んでいる女性たちの相談を受けてあげられるような「お婆ちゃんの知恵袋」になりたいとのこと。

 

 普段、忙しくサロンワークをしていると、多くのセラピストが日々の予定をこなすのに精一杯になりがちです。

 

 でも、ときには10年後、20年後、もっと言えば、老後をどう過ごしたいかを考える機会があってもよいのかもしれません。

 

 何か思い浮かぶイメージがあれば、ぜひ友人や家族に語ってみてはどうでしょう。

 

 そうすることで、将来のイメージと関連する情報に自然と目が止まるようになり、人づてにも情報が集まってくるようになるのではないでしょうか。

 

 そして、ある日突然、具体的なプランが脳裏に浮かんでくることもある。

 まさに今回のインタビュー中の清野さんのように。

 

 セラピストとは、いつも人を癒やすアイディアを探していて、人の喜びをエネルギーに変える人々です。

 

 そんな彼女ら、彼らのアイディアには、優しさが溢れています。

 

 だからこそ、私はいつもワクワクしながら、出会うセラピストたちに聞くのです。「10年後、20年後、あなたはどうなっていたいですか?」と。