広島県広島市にて10年にわたって介護施設でアロマテラピーを提供しながら、自宅サロンと自宅スクールを運営している砂川沙央里さんのセラピストライフを紹介します。
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砂川さんは、広島県を中心に老人ホームやデイサービスの現場に訪問し、アロマテラピーを行う「訪問介護アロマセラピスト」として活動しています。また障害者支援施設の「生活介護」にも訪問しています。
提供する施術は、主に足や顔へのオイルトリートメントで、施術時間は30〜60分ほど。場所は個室のこともあれば、施設のスペースを借りることもありますが、1日で5〜10名のお年寄りに施術をしています。
砂川さんは、これまで15の施設と関わりを持ってきたそうですが、訪問頻度は施設や施術を受ける方の都合によって様々で、週1回のこともあれば、隔週や月1回のこともあるそうです。
もっと何かできることがあるはず
今ではお年寄りが大好きな砂川さんですが、意外にも「おじいちゃん子、おばあちゃん子というわけでもなかったし、学生の頃を振り返っても介護の仕事にとくに関心があるわけでもなかった」と言います。
そんな彼女がどうして訪問介護アロマセラピストという活動をするに至ったのか、その経緯を教えてもらいました。
最初のきっかけは、父親が入院した際に、入院患者やその家族に対して、もっと何かできることがあるはずだと考えたこと。その経験から、砂川さんは看護師を目指しますが、残念ながらその願いは叶いませんでした。
それでも砂川さんは、患者さんに何かしてあげたいという気持ちを持ち続け、進路を探すうちに「アロマ」と「介護」という別の道を見つけます。
砂川さんがアロマテラピーを知ったのは、20歳くらいのころ。補助療法としても用いられるアロマテラピーですが、砂川さんにとって「香り」は、幼少期の記憶とつながる懐かしいものでした。
「私、匂いフェチだったのかな。小さい頃にミカンの皮を水に浸けて、それを香水だと言いながら遊んでいたんですよね」(砂川さん談)
そして、学んだアロマテラピーの活かし方を模索する中で、広島県内に訪問介護事業所があることを知り、介護の現場に飛び込むことを決意します。
自然の力と人の手による癒やしは他には代えられない
こうして介護の現場でアロマテラピーを提供することを決めた砂川さんですが、最初は「これを有償で求めてくれる人がいるのだろうか」と不安に思っていたそうです。
そこで、砂川さんは初めてアロマテラピーを受ける方に対して、無料で体験してもらうようにしたそうです。
すると、彼女の施術を求める人が増えていったのです。
その中では、意思の疎通が難しい方に施術をして、「嬉しそうにしている」「リラックスしているのがわかる」と、立ち会いのご家族に喜ばれたケースもあったそうです。
一般的に、介護を受けるお年寄りにしてあげられるサービスは、そう多くありません。その方の運動能力や認知能力が衰えているなら尚更です。
そうした現状で、自然の力と人の手による癒やしを提供できるアロマセラピーは、施術を受けるご本人にとっても、またそのご家族にとっても、他に代えがたい価値を感じてもらえたのだろうと思います。
訪問介護アロマセラピストとしての活動において大切にしていることを聞くと、「介護士としての視点」と「高齢者が好き、という気持ちですね」と砂川さんは笑顔で教えてくれました。
好きな相手であれば、もっと気持ちよくなってもらいたいと勉強をするし、変化にも敏感になれる。
アロマテラピストの視点だけではなくて、介護士の視点でも考えることができれば、施設の介護士さんと良い協力関係を築くことができるということなのでしょう。
「私が施設に行くことで、そこにいるみんなが笑顔になって、“元気になったよ”って言ってもらえるなら、すごく嬉しいです」(砂川さん談)
校長からのメッセージ
老人ホームやデイサービスなど、介護の現場に入ってセラピーを提供する業態での収益構造について、私を含め、携わりたいと願うセラピストも知りたいことでしょう。
彼女の場合、一人当たり30分約3,000円ほどで、1日の訪問でだいたい5、6人のケアしています(多い時期には10人だったこともあったそう)。
お支払方法は施設によって様々ですが、主に月払いで施設、あるいはセラピーを受けた方のご家族からの流れとなるそうです。
また、活動を継続するために必要なことを聞いたところ、「やはりお金を回すこと」という経営的なお話とともに、「介護士の輪の中に入ること」と答えてくれました。
「介護士の輪の中に入って、そこで私の人となりを知ってもらって、そこからアロマのことを知ってもらうようにしています。そうやって、“来ていいよ”って言ってもらえる施設や人間関係を増やしていくことが大事だと思います」(砂川さん談)
そうした姿勢こそが、時間はかかるかもしれませんが、堅実な活動の形なのでしょう。
施術を受けるお年寄りにとっても、施設の介護士さんにとっても、「来てくれて嬉しい」と思ってもらえることが、砂川さんの喜びになる。
そしてこれは社会貢献の意味もあります。つまり「三方良し」ならぬ「四方良し」とも言えそうです。
砂川さんが蓄積してきた経営ノウハウと、現場での実績は、一朝一夕ではできないものです。
だからこそ、今後一緒に働く仲間が増えていった場合にも活かせる、大変貴重な財産となっていくのだとインタビューを通してそう感じました。
訪問介護アロマ Micro(ミクロ)