はしづめさんは、現在、緩和ケアを必要とするご家庭に訪問し、患者さんの「クオリティ・オブ・ライフ」の向上のために、様々なケア、セラピーの施術を行っています。
具体的には、オイルを使ったマッサージ、ドライな状態でのマッサージ、フェイシャルやフット、クレイパック、ハーブボールなど、患者さんごとに最適な方法を選んで提供しています。
施術時間は、20分が1つの目安。この20分という限られた時間は患者さんにケアできる最適な時間で長年の経験から見出された時間だそうです。
医療関係者でないからこそ
はしづめさんは、医療関係者ではありません。しかしだからこそ患者さんを支えるご家族や医師、看護師、ケアマネジャーなど、様々な専門家とコミニケーションをとりながらセラピーを行うことができているのです。
「すべては患者さんご本人のクオリティ・オブ・ライフを上げるため。そのためにセラピストができる事はたくさんあります。」(はしづめさん談)
はしづめさんは、もともとセラピストとして高齢者をケアする方法を学び、月1回の施設訪問と月12回のボランティア育成講座を行っていたとのこと。
ただ、施設でのケアには様々な制約があり、より柔軟なケアのあり方を求めて在宅での緩和ケアを追求するようになりました。最初は身近な人から、そして7、8年かけて、10人ほどの患者さんを受け持つ緩和ケアセラピストとして歩んでいきます。
「当初、セラピストの立場での緩和ケアについて、教えてくれる人はいませんでした。ですから、医療関係者や様々な専門家に教えを乞い、その中からセラピストでなければできないことを見出していきました。それが患者さんのクオリティ・オブ・ライフを上げるためのケアラーとしての役割です」
家族にも医療関係者にもできないようなケアを、セラピストは行うことができ、ときには専門家や家族の間をつなぐ立場にもなれます。
「あなたみたいな人が必要ですね」と家族や医師からも言われる中で彼女は緩和ケアセラピストの立場を確立していきます。
身近な存在への実践を積み上げていくからこそ
こうした緩和ケアを担うセラピストになるために大切なこととして、はしづめさんは「自身の身近な存在へのケアなどによって実践を積み上げていくこと」だと語ってくださいました。
日本において、在宅での緩和ケアにセラピストが関わる機会はまだまだ少ないのが現状。ですが、在宅での緩和ケアを必要とする人はこれからも増えていき、患者さんのクオリティ・オブ・ライフを高めることは、ますます重要視されていくのでしょう。
患者さんのクオリティ・オブ・ライフを高められる在宅緩和ケアの実践、そこにセラピストが果たすべき役割がある。その思いで、はしづめさんはこれからも活動していきます。
校長からのメッセージ
彼女の口から何度も出た言葉、それはQOLアップを目指すなら「トータルペインの外にある”生活の痛み”を見落としてはならない」というもの。
緩和ケアを必要とする患者さんにとって「QOL」が何よりも求められていて、そこに日本のセラピストはもっと関わることができるはずだと言うのです。
おそらく、日本のセラピストの中で緩和ケアを専門とするセラピストは、人数も実例も少ないのが現状でしょう。
しかし、これから「超高齢化社会」となる日本の社会構造を考えても、この分野においてセラピストはもっと求められてよいと思うのです。
はしづめさんの「心地良くあることを、生きていくことを、あきらめない」という強い思いと活動は、今後さらに広がっていくことでしょう。